9月に入ると、教室に来る子どもたちの様子が変わります。
「今日、運動会の練習で疲れた」
「ダンス、まだ覚えられてない」
そして毎年、必ず何人かはこう言います。
「運動会、行きたくないな」
こんにちは、しゅんたろうです😊
運動指導者として25年以上、のべ20万人以上の子どもたちを指導してきました。
3人の子どもを育てる父でもあります。
運動会の記事は世の中にたくさんありますが、その多くは「速く走る方法」です。
でも、親御さんの悩みはそれだけではないはずです。

ダンスが覚えられない。緊張して力が出ない。練習で疲れて機嫌が悪い。
そもそも行きたがらない。
この記事では、本番までの2週間で家庭にできることを、走る以外の悩みも含めてお伝えします。
運動会前の子どもに、何が起きているか
対策の前に、今のお子さんの状態を整理します。
ここが分かると、声のかけ方が変わります。
身体:思っている以上に疲れている
運動会の練習期間は、子どもにとって普段の何倍も身体を使う2週間です。
炎天下での隊形移動。繰り返しのダンス練習。緊張しながらの入場行進。
しかも夏休み明けで、身体はまだ本調子に戻っていません。
練習が始まる時期は、1年でもっともケガが増えるタイミングです。
帰ってきてすぐ寝てしまう、宿題が進まない、機嫌が悪い。
これは怠けではなく、単純に体力を使い果たしているサインです。
心:「できない自分」を毎日見せられている
こちらのほうが、実は根が深いです。
運動会の練習は、できるかどうかが毎日みんなの前で見える場です。
かけっこの順番、ダンスの振り、リレーのバトン。
苦手な子は、それを2週間毎日くり返すことになります。
✅ 振りを覚えられず、周りを見ながら踊る
✅ 「〇〇くんのせいで負けた」と言われることもある
大人が思うより、この2週間は消耗します。
「行きたくない」という言葉は、多くの場合ここから出てきます。
本番までの2週間で家庭がやるべきことは、練習を増やすことではありません。消耗している身体と心を、本番まで持たせることです。ここを間違えると、当日に力が出ません。
本番までの2週間でやること3つ
家庭でできることを、優先順に3つお伝えします。
どれも特別な練習ではありません。
① 起きる時間を、本番の朝に合わせる
一番効くのがこれです。
運動会は、たいてい午前中に始まります。
かけっこも、多くの学校で午前中に行われます。
ところが、人の身体は起きてから3〜4時間経たないと本来の力が出ません。
7時に起きて9時に走るのと、6時に起きて9時に走るのとでは、身体の準備がまるで違うんです。
だから、本番の1週間前から起床時間を本番に合わせておきます。
当日だけ早起きさせても、身体は間に合いません。
② 朝、5分でいいので外に出る
起きるだけでなく、朝に身体を動かしておくとさらに効きます。
やることは簡単です。
✅ その場でジャンプ10回
✅ 手をぐるぐる回す
✅ もも上げ10回
✅ ゆっくり走って往復するだけでもよい
朝に一度身体を動かしておくと、体内時計が「今日はもう動く日だ」と認識します。
登校前の5分です。長くやる必要はありません。
この5分は、運動会が終わっても続ける価値があります。朝に身体を動かす習慣がある子は、午前中の授業での集中も違います。運動会をきっかけにできると、いちばんお得です。
③ 「勝つ」以外の目標を、一緒に決めておく
これが3つめで、そして一番大事かもしれません。
かけっこで1位になれる子は、クラスに1人です。
つまり、ほとんどの子は「勝つ」を目標にすると、必ず失敗します。
だから本番前に、勝ち負け以外の目標を子ども自身に決めてもらいます。
・スタートで出遅れない
・最後まで全力で走りきる
・ダンスで一度も止まらない
・大きな声で応援する
どれでも構いません。大事なのは自分で決めることです。
自分で決めた目標は、結果がどうであれ「達成できたかどうか」を自分で判断できます。
そして達成できたなら、たとえ最下位でも本人の中では成功になります。

悩み別・本番までの対処法
ここからは、よくある悩みごとに具体策をお伝えします。
| 悩み | 2週間でできること |
|---|---|
| 走るのが遅い | フォームより「スタートの姿勢」だけ直す |
| ダンスが覚えられない | 音楽をかけて、家で流し見するだけ |
| 緊張してしまう | 当日の流れを事前に言葉で確認する |
| 行きたがらない | 理由を問い詰めず、参加の仕方を一緒に決める |
順番に説明します。
走るのが遅い|直すのは「スタートの姿勢」だけ
2週間で走り方を変えるのは、正直に言うと難しいです。
ただ、スタートの一歩目だけなら間に合います。
多くの子は、スタートの合図の前に身体を起こして立っています。
その姿勢からだと、最初の一歩が上に向かってしまい、前に進みません。
やることは1つです。
「よーい」で、前の足に体重を乗せて、少し前に倒れる。
倒れそうになったところで足が出る。これが一番速い一歩です。
家の廊下で3回やるだけでも変わります。
2週間で変えられるのは、走り方ではなくスタートの姿勢です。
走り方そのものをじっくり直したい方は、こちらの記事をどうぞ。
👉 あわせて読みたい:子どものかけっこを速くする本当のコツ|運動指導者が教える「体幹と軸」の育て方
ダンスが覚えられない|家では「見るだけ」でいい
振り付けを家で練習させようとすると、たいてい嫌がります。
学校で毎日やっているのに、家でもやらされるからです。
かわりに、音楽を流すだけにしてください。
料理をしている間、お風呂上がりの数分。
曲が耳に入っているだけで、振りは思い出しやすくなります。
身体を動かす記憶は、音とセットで残るからです。
もし本人が踊り出したら、それは覚えたい気持ちがあるということ。
そのときだけ一緒にやってあげてください。
緊張してしまう|当日の流れを先に言葉にする
緊張の正体は、多くの場合「何が起きるか分からない不安」です。
だから、当日の流れを一緒に確認しておくだけで、かなり軽くなります。
✅ 何番目の競技に出るか
✅ 待っている間はどこにいるか
✅ お弁当はどこで食べるか
✅ 終わったら何をするか
とくに最後の1つが効きます。
「終わったら、帰りにアイス買って帰ろか」
運動会の先に楽しみがあると分かると、当日そのものの重さが減ります。
行きたがらない|理由を問い詰めない
これが一番、親御さんが苦しむところだと思います。
まず、やらないでほしいことがあります。
「なんで行きたくないの?」と理由を問い詰めないでください。
子ども自身も、理由をはっきり分かっていないことがほとんどです。
分からないことを聞かれると、黙るしかありません。
かわりに、こう言ってあげてください。
「そっか。行きたくない日もあるよな」
否定も説得もせず、まず受け止める。
それだけで、話してくれることがあります。
そのうえで、参加の仕方を一緒に決めます。
・全部出る
・出たい競技だけ出る
・見学席にいる
・保健室にいてもいい
選択肢があると分かるだけで、「行くしかない」という圧が減ります。
私の教室でも、「見学でいいよ」と伝えた日にかぎって参加する子が本当に多いんです。
毎年この時期に、同じ相談を受けます。そして無理に行かせた家庭より、「どうするか一緒に決めた」家庭のほうが、翌年の運動会が軽くなっています。1年単位で見ると、無理をさせないほうが結果的に早いことがあります。

前日と当日の朝にやること
ここは短く、はっきりお伝えします。
前日にやること・やらないこと
| やること | やらないこと |
|---|---|
| いつもどおりの時間に寝る | 「明日がんばってね」と何度も言う |
| 持ち物を一緒に確認する | 直前に練習させる |
| 当日の流れをもう一度話す | 特別なごちそうを出す |
右の3つは、どれも良かれと思ってやりがちなことです。
でも「がんばってね」を何度も言われると、プレッシャーが積み上がります。
特別なごちそうも、「明日は特別な日だ」という緊張を強めてしまいます。
前日にできる一番のことは、いつもどおりに過ごすことです。
当日の朝
朝ごはんは、いつも食べているものを、いつもより少し早く。
競技の3時間前には食べ終わっているのが理想です。
消化にエネルギーを使っている状態では、身体が動きません。
そして、家を出る前に軽く身体を動かしておきます。
その場でジャンプ、もも上げ、腕まわし。1分で十分です。
じっと止まって伸ばすストレッチは、この場面には向きません。
直後に力を出しにくくなることが分かっているからです。
身体の硬さが気になる方は、こちらもあわせてどうぞ。
👉 あわせて読みたい:子どもの身体が硬い原因|柔軟性を高める3つのストレッチ
親の応援でやってはいけないこと
最後に、当日の親の振る舞いについてです。
25年間、たくさんの運動会を見てきて、はっきり感じていることがあります。
① 走っている最中に名前を叫ばない
応援したい気持ちは分かります。
でも、走っている子は自分の名前が聞こえると、そちらを見ます。
一瞬フォームが崩れ、スピードが落ちます。
叫ぶなら、走り終わったあとにしてください。
② 終わった直後に順位の話をしない
ゴールした直後は、まだ息が上がっています。
その状態で「何位だった?」と聞かれると、順位が結果のすべてになります。
最初の一言は、これで十分です。
「おつかれさま。最後まで走ったな」
③ 他の子と比べない
「〇〇くん速かったね」
悪気なく出る言葉ですが、子どもには「自分は遅い」としか届きません。
比べるなら、去年のその子自身とです。
「去年より、腕がしっかり振れてたよ」
事実を伝えるだけで、子どもは自分の成長に気づけます。
運動会が終わったあとに、してほしいこと
意外と見落とされるのが、終わったあとです。
運動会は、子どもにとって2週間かけて準備した大きな行事です。
それが終わった翌週は、気が抜けて生活が乱れやすくなります。
そして「もう終わったから」と、朝の5分の習慣もやめてしまいがちです。
せっかく整えた生活リズムは、運動会が終わってからが本番です。
2学期はまだ長く続きます。ここで習慣を手放すのは、正直もったいないです。
👉 あわせて読みたい:2学期がラクになる|夏休み最後の2週間でやる3つの準備
よくある質問
Q1. 運動会までに走るのを速くしたいです。何をすればいいですか?
2週間でフォームを変えるのは難しいので、スタートの姿勢だけに絞ってください。
「よーい」で前の足に体重を乗せ、少し前に倒れる。これだけで一歩目が変わります。
家の廊下で3回やるだけでも十分です。
本格的に走り方を直すのは、運動会が終わってから取り組むほうが身につきます。
Q2. 練習で疲れきっていて、宿題が進みません
その時期は、宿題より睡眠を優先していいと思います。
運動会の練習期間は、子どもにとって普段の何倍も身体を使う2週間です。
学校の先生も、この時期の疲れは分かっています。
どうしても気になるなら、朝に回すほうが進みます。
Q3. 当日、緊張で力が出せませんでした。どう声をかければ?
「緊張したな」と、まず事実を認めてあげてください。
励ましより、状態をそのまま言葉にするほうが子どもは落ち着きます。
そのうえで、緊張は準備をしてきた証拠だと伝えてあげてください。
どうでもいいことには、人は緊張しません。
Q4. きょうだいで差がついてしまい、下の子が落ち込んでいます
順位や結果を家庭の話題の中心にしないことです。
「どっちが速かった」ではなく、それぞれが自分で決めた目標を達成できたかで話してください。
本番前に別々の目標を決めておくと、この比較が起こりにくくなります。
Q5. 練習でケガをしてしまいました
まず学校と相談して、無理に参加させないでください。
運動会の練習期間は1年でもっともケガが増える時期で、痛みを我慢して続けると長引きます。
痛みが続く場合や腫れがある場合は、整形外科を受診してください。
1回の運動会より、その後の身体のほうがずっと大切です。
Q6. 毎年、運動会の時期になると体調を崩します
疲れと緊張が重なる時期なので、体調を崩す子は少なくありません。
ただ、毎年決まって同じ時期に崩れる場合は、本人が相当な負担を感じている可能性があります。
「行きたくない」が体調に出ているケースもあります。
気になる様子が続くときは、担任の先生や、必要に応じて小児科・スクールカウンセラーに相談してみてください。
Q7. 運動が苦手で、そもそも運動会が嫌いです
運動会を好きにさせようとしなくて大丈夫です。
目標は「嫌いなまま終わらせない」くらいで十分だと思います。
1つでも自分で決めた目標を達成できれば、その記憶が残ります。
運動そのものへの向き合い方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
👉 あわせて読みたい:運動が苦手な子が運動を好きになる5つの環境|運動指導者が解説
家庭でできることを超えていると感じたら
「走るのが遅くて、本人が本気で気にしている」
「毎年つらそうで、どうにかしてあげたい」
そんなときは、家庭だけで抱え込まなくても大丈夫です。
運動の苦手さは、その子の身体の使い方のくせが関係していることが多く、専門家が見ると原因がはっきりすることがあります。
マンツーマンで動きから教えてくれるスポーツ家庭教師という選択肢もあります。
集団が苦手な子でも、一対一なら自分のペースで取り組めます。
無料体験もあるので、雰囲気を見てみるだけでも十分です。
ただ、これは運動会に間に合わせるためのものではありません。
来年の運動会を、今年より軽い気持ちで迎えるための準備です。
まとめ|2週間でできるのは、練習ではなく準備
✅ 起きる時間を本番に合わせる(当日だけでは間に合わない)
✅ 朝5分、外で身体を動かす
✅ 「勝つ」以外の目標を本人に決めさせる
✅ 走るのは「スタートの姿勢」だけ直す
✅ 前日はいつもどおりに過ごす
✅ 走行中に名前を叫ばない・直後に順位を聞かない
運動会は、子どもにとって1年でいちばん人前に立つ日かもしれません。
だからこそ、親としては何かしてあげたくなります。
でも本番までの2週間にできるのは、練習を増やすことではなく、その子が持っている力を当日ちゃんと出せる状態にすることです。
25年間、たくさんの運動会を見てきました。
当日いい表情をしている子に共通していたのは、速さでも順位でもありませんでした。
自分で決めた目標を持って、スタートラインに立っていたこと。
順位は変えられなくても、これは今日からでも変えられます😊
お子さんの本番が、いい一日になりますように✨
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
